因果一如という言葉をきいたことはありますか？
因果一如とは、禅の言葉で「原因は結果である」または「原因と結果は同じ」という意味です。
でもこれだけでは、少しわかりにくいかもしれませんね。
因果応報と因果一如
では、因果応報という言葉を聞いたことはあるでしょうか？
因果応報というのは原因があって結果がある、つまり、「良いことをすれば良いことが起き、悪いことをすれば悪いことが起きる」という、一つのものの考え方です。この因果応報の考え方でものを考えれば、何か悪いことが起こったのは自分の行いが悪かったせいで、結果が良かったのは自分が良いことをしたから、ということになります。
これに対して「因果一如」は、原因を作ったときに結果は出てしまっている、というのです。結果のことは考えず、行為そのものがすでに結果であるのだから、今やっていることをやればいいだけ。とてもシンプルな考え方ですが、とても奥の深い考え方でもあると思います。
世の中は因果応報では説明がつかない？
普段の私たちは、無意識に「因果応報」の考え方で、物を見ているのではないでしょうか。自分が失敗した時は、自分のやり方に原因があると考えがちですし、うまくいかない人を見れば、その人の行いが悪かったからだ、と考えがちでしょう。もちろん、ほとんどのことはそうかもしれません。失敗した原因があると考えるから、改善もしていけるでしょう。
しかし世の中のすべてが、因果応報の法則に従って成り立っているのかと考えてみると、そうではないことも、たくさんあるように思います。
身近なことを例として挙げてみます。
頑張って勉強して、良い大学を出た人が、みんな良い会社に就職できていますか？
頑張って働いて良い仕事をした人は、みんな、良いお給料をもらえていますか？
カッコ良い髪型にしておしゃれをした人は、みんな女子にモテているでしょうか？
健康に気をつけている人は、みんな長生きしていますか？
因果応報を信じている人は、頑張って働いて良い仕事をすればたくさんお給料がもらえるはず、と考えます。しかし、どんなに一生懸命働いても世の中が不況になってしまえばお給料はあまりもらえないでしょう。頑張って勉強して良い学校に入っても、卒業する年が就職難の時期であれば、良い企業に就職できない人が多いです。
また、モテるためにおしゃれをした人は誰でも、その努力が報われてモテモテになって欲しいところですが、筆者の見る限りそうとは限らない残念なケースが多いようです。
健康オタクなのに、短命な人も見かけます。
因果応報で片付くほど、世の中は単純ではないように思えます。
努力して成功した人たちの中には「うまくいかないのは本人の努力が足りないからだ」と言う人もいます。因果応報の考え方でものを考えれば、うまくいかないのは本人に何かしら原因があるはずだと考えるのですから、そう思うのも当然かもしれません。
因果応報の考え方はある面でとても正しいと思いますが、しかし、この考え方に縛られてしまうと自分を苦しめる場合があるのではないでしょうか。例えば、一生懸命勉強したのに、ブラック企業に就職してしまった人が「自分はまだまだ勉強が足りなくて仕事ができないからこんな会社にいるのだ」と考えたとしたら、さらに資格を取ろうとして勉強を続け、仕事を頑張り最後には疲弊してしまうかもしれません。
なにごとも、原因があって、結果がある、という風に考えることが、その人の救いにならないこともあるのではないかと、筆者は思うのです。
どんなに頑張っても報われない人も大勢いるのは、事実だと筆者は思っています。運のいい人と悪い人は、いるように思います。景気の良い時に生まれれば、簡単に良い会社に就職できるでしょうし、生まれつき金持ちの家に生まれていれば、仕事などしなくても親の財産で暮らしていけるでしょう。
こんな不公平な世界に生きていれば、どうせ頑張っても無駄・・・・と、ついつい、腐ってしまいたくなるのが人情というものですね。
因果一如は今を生きる心
しかし、そんなふうに、腐りたくなってしまう時こそ、因果一如の考え方が大切なのではないかと筆者はおもいます。
最初の方にも書きましたが、因果一如というのは、「原因と結果は同じ」という考え方です。
この考え方をすると、こうなります。
良い就職先に就職できなかったとしても、あなたは一生懸命勉強して良い大学に入りました。
あなたは何をしてもイケメンにはなれないしモテないけれど、美容室に予約を入れて髪型を変えました。
だから、それでいいではないですか？
あなたが勉強して良い大学に入れたのは勉強を頑張ったからですよね。もしそうであるなら、あなたは勉強がもともと、好きだったはず。だから最初から何も考えず、一生懸命勉強にはげめば良かっただけなのです。勉強したことで、あなたは、今まで知らなかったことをたくさん知ることができたろうし、論理的な思考能力も身についたでしょう。勉強を頑張ったのに良い会社にも入れなかったし、お金ももらえなかった、と、結果だけ考えれば損をした気持ちにもなりますが、「一生懸命勉強をした」という「原因」がすでに「結果」なのですから、一生懸命勉強してそれでよかったのです。
また、イケメン風の髪型に変えたあなたは、結果的にはモテなかったかもしれないけれど、どんな髪型にしようか雑誌を見ながらワクワクしながら考えたでしょう？最新のヘアスタイルでバッチリ決めた（と思っている）あなたは、勇気を出して意中の彼女に告白し、残念ながらフラれたかもしれませんが、あなたが彼女を好きな気持ちが本物なら、それでいいではありませんか。髪型もおしゃれになったことだし、充実した時間を体験できたわけですから。「髪型を変えたのに、振られた。自分は何をやってもダメだ」などと考えてはいけません。その時、その時、一生懸命に何かをする、その体験が一番貴重なことなのです。
健康オタクのあなたは、健康に気をつけることで、いろいろな体験ができましたよね？健康食品のお店に足を運び同じ健康志向のお友達ができたかもしれないし、スポーツを楽しんだかもしれません。結果がどうであれ、一生懸命やったことに意味があるのです。
仕事も恋愛も結婚も同じこと。
一生懸命働いたのにお給料が安い、働いても報われない、と考えるのは、結果を気にするからです。
好きな人のために、こんなに愛したし、いろいろ頑張ったのに振り向いてもらえない、報われなかったと考えるのも、結果を気にするからです。
結果を気にせず、今現在の行為に無心に取り組めば、悩むことなんて何もないのです。
朝いつも通りに出勤し、自分の仕事を一生懸命やりましょう。できることはできるし、できないことはできないでしょう。その時その時の、ベストを尽くしましょう。相変わらずお給料は安いかもしれないが、それであなたは充分なのです。
好きな人がいるなら、ただ愛せば良いでしょう。尽くしたかったら、尽くせば良いのです。相手から愛してもらえなかったとしても、あなたがその人を愛した気持ちが本当で、その人のために一生懸命に何かをしたのなら、それでいいではありませんか。
そして不思議なことに、結果を気にせず、その時その時に集中して生きた方が、良い結果が出やすいようにも思います。
そうこうしているうちに、時は過ぎ人生は終わるでしょう。人生なんて過ぎてみれば、あっという間。毎日毎日を一生懸命、無心に生きる。それが「因果一如」の生き方ではないかな、と私は思っています。
徹底的に充実した「今」を生き、その積み重ねで人生が過ぎてゆく。それって、とてもシンプルだけど、素晴らしい生き方ではないですか？
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